2007年新潟県中越沖地震 ─震源過程─

東京大学地震研究所
強震動グループ
2007年07月17日
2007年08月09日
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目次

1. 震源過程(遠地波形解析)


1. 震源過程(遠地波形解析:暫定版)

 2007年7月16日に発生した新潟県中越沖地震では震源付近の柏崎市周辺をはじめ多くの被害が発生している.また,震源域は"新潟-神戸ひずみ集中帯"や一部で想定されているプレート境界域に近く,この地震の震源過程解析を行うことは,強震動発生の原因や日本海東縁のテクトニクスを考える上でも重要である.
 我々は強震波形記録や遠地波形記録を用いて震源過程解析を実施しているが,ここでは断層面および概略の震源過程を推定するために,遠地実体波を用いて行った解析結果を示す.使用したデータはIRIS-DMCからダウンロードした広帯域地震計記録(P波上下動49点) であり,Kikuchi and Kanamori (2003)のプログラムを使って解析を行った.
 はじめに点震源を仮定してメカニズム解を求めた.その際,震央位置は防災科学技術研究所Hi-netによる速報値(37.557, 138.615)を使用した(図1).その結果,
    (str, dip, rake) = (52, 38, 89), (233, 52, 91)
に節面を持つ解が得られた.
 次に,得られた2つの節面のそれぞれに断層面を仮定して深さを変化させながらすべり分布を求めた.その結果,東傾斜の断層面を設定した場合の方が残差が小さく,観測波形との一致が良好であった.また,震源の深さを16kmとした場合に残差が最も小さくなった.そこで,断層面を(str, dip) = (52, 38)として震源深さを16kmとした面の大きさを微調整してさらに解析を行った.
 その結果を図2に示す.大きなすべりは破壊開始点付近と浅部の南西側の2カ所に見られる.これは,遠地実体波の観測記録(図3)に見られる2つのパルスに対応したものであり,近地強震波形にも見られる特徴とも一致する.得られた地震モーメントは0.839×1019Nm (Mw 6.5)であり,最大すべり量は約1.0mであった.メカニズムは北東−南西走向を持つ逆断層型であり,破壊は震源から浅部の南西側に進んだものと考えられる.

 今後,近地強震波形を使った震源インバージョンを行う予定である.


図1. 設定した震源位置.星印が震源を表す.
図2. 遠地実体波を用いた 震源過程インバージョンの結果(暫定解.今後変更 される可能性があります). 左:すべり時間関数とメカニズム解.右:すべり分布.strike=0, dip=0kmの位置が震源に相当し,上側が浅部,左が南西に対応する.

図3. 観測波形(太線)とすべり分布から計算される波形(細線)の比較.
文責:引間和人・纐纈一起