2008年岩手・宮城内陸地震:震源過程

2008年岩手・宮城内陸地震 ─震源過程─

東京大学地震研究所
強震動グループ
2008年11月24日
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目次
1. 遠地実体波解析(暫定解)

2. 強震波形・測地データを使った解析
(2008SSJ-ASCでの発表スライドをUPしました[2008.11.24]
ファイルサイズが大きいですがご容赦下さい)

0. はじめに

2008年6月14日に発生した2008年岩手・宮城内陸地震(Mj 7.2)の震源過程解析を行いました.以下では遠地実体波を用いた震源過程解析の結果を示します. 今後,遠地実体波形の再解析や,近地強震波形などを用いた解析を行う予定であり,以下の結果は変更される可能性があります.(2008年6月14日,速報)

1. 遠地実体波解析

 はじめに,IRIS-DMCから収集した遠地実体波記録(P波上下動54点)を用いて点震源を仮定してメカニズム解を決定した.震源位置は気象庁による暫定値(北緯39.028°,東経140.880°,深さ8km)を使用した.その結果,
 (str, dip, rake) = (203, 37, 93), (19, 53, 88)
に節面を持つ逆断層型の解が得られた.これらは北西傾斜でやや低角な断層面と,南東傾斜のやや高角な断層面に相当する.
 次に,2つの節面のそれぞれに断層面を設定してすべり分布を求めた.観測波形と理論波形との残差の値を参照して断層面の決定を試みたが,断層の傾斜方向による残差の違いは有意ではなく,観測波形だけからは断層面を決定できない.しかし,気象庁による余震分布pdfファイル)によると余震は西側に傾き下がる傾向を持つことから,ここでは,北西傾斜の断層面を設定してすべり分布を求めた結果を示す.
 図1には断層面上でのすべり分布を示す.震源から浅部に向かって大きなすべりが得られている.断層面44km×24kmの大きさとしたが,大きなすべりは25km×16km程度の範囲に見られる.震源継続時間は10〜15秒である.図2には地表面に投影したすべり分布を示す.南部に破壊が伝播した様子が見られる.図3には観測波形(赤)と計算波形(黒)との比較を示す.
 なお,南東傾斜の断層面を設定した場合にも,震源よりも浅部の南方に大きなすべりが分布する結果が得られた.

図1  断層面上のすべり分布 (北西傾斜の断層面) すべり時間関数
Mo=2.0×1019 Nm (Mw 6.8)  Dmax=2.5m


図2  地表に投影したすべり分布 (北西傾斜の断層面)
灰色の丸は6/14 18:00までの余震(Hi-netの自動処理震源)


図3  観測波形と計算波形の比較 (北西傾斜の断層面)

2. 今後の予定

今後,余震分布などを参考に断層面の設定位置を再検討するとともに,近地強震波形や地殻変動データなども使い,より詳細な震源過程の推定を行う予定である.

謝辞

解析には,IRISの波形記録,気象庁による震源位置,防災科学技術研究所Hi-netの自動処理震源位置を使用しました.記して感謝致します.

文責:引間和人 (地震火山災害部門 特任研究員)