東京大学地震研究所 | |
強震動グループ | |
2005年08月20日 | |
2005年09月14日 |
震源過程 | .................................................. | 呉長江・纐纈一起・三宅弘恵 | |
強震動 | .................................................. | 三宅弘恵・古村孝志・纐纈一起 | |
震度 | .................................................. | 纐纈一起・坂上実・境有紀(筑波大) |
8月20日の暫定解では強震波形記録(KiK-net)だけあったが,今回,遠地実体
波もデータに加えて,震源過程のジョイント・インバージョンを行った.
震源メカニズムには北西・南東圧縮の逆断層タイプ,断層面は沈み込む太平洋
プレートの上面付近に設定した.
今回と1978年の地震の強震記録(変位)を比較すると
(図A1),初めの部分は両者よく類似しており,
両者の破壊開始点が近接していることを示唆しているので,破壊開始点(図1
赤星印)には1978年に近い場所に決まっている
地震研による震源位置を採用した.
全体の地震モーメントは0.68×1020Nm(Mw 7.2),
得られた断層面上のすべり分布を1978年の地震(図中青コンター:
呉・他(2004)が気象庁・港湾技研・土木研の記録を用いて決定した)と
比較すると,最大アスペリティは
東北大による余震分布や
山中(2005)の遠地実体波解析と同じく破壊開始点の西側に位置して,
1978年の破壊領域の南東部分に相当する.
このほか,強震記録上に見える二番目のパルス(図A2)を説明するため,さらに西側に
すべりが半分程度の第二アスペリティが与えられている
(図A3).
図1. 震源過程インバージョンの結果(暫定解第二版.今後変更 される可能性があります). 今回と1978年の地震のすべり分布を色トーンと青色コンターで示す. ★★はそれぞれの破壊開 始点を表す. 下の断面では定常の微小地震分布に今回の地震の断層面と破壊開始点をプロッ トした.強震記録(図A4)および遠地実体波 (図A5)の観測波形と理論波形を比 較すると,仙台平野内など南側の強震観測点で一致が悪く,グリーン関数計算 のための構造などを再検討する必要がある.
(以上,呉長江・纐纈一起・三宅弘恵による)
K-NETおよびKiK-net によって現時点で公開されている強震波形を用いて地震 動の特徴を調べた.断層最短距離に対する最大加速度PGAと最大速度PGVの分布 (図2)はMw 7.1,深さ47kmのプレート境界地震に対する司・翠川 (1999) の 減衰曲線に基本的に一致している(深さ,Mwは1978年震源付近をセントロイド とした場合のCMT解).つまり,震源が深いことなどに起因して, 今回の地震では2003年十勝沖地震や2004年紀伊半島南東沖地震のときに見られ たような長周期地震動の発達は顕著ではなかった(図3,詳細は こちらへ). このほか宮城県内 など震央に近い点では,短周期成分の多い強震記録が多数得られており,その スペクトル形状が2003年5月のスラブ内地震に匹敵する地点も見られた. (一部, 8月19日付朝日新聞朝刊に掲載)
図2. 最大加速度(左)と最大速度(右)の距離減衰. 実線・点線は司・翠川 (1999) の減衰曲線とその±σを表す.
図3. 今回の地震と2004年紀伊半島南東沖地震の東京・新宿に おける速度波形(左)と速度スペクトル(右)の比較.
(以上,三宅弘恵・古村孝志・纐纈一起による)
震央に近い宮城県内は震度5強,5弱を観測した地点が多いが , 震度6弱が宮城県川崎町でただ一点飛び地的に観測された. その波形記録(東北大理学部予知センターの収集による)は上記のような短 周期成分が卓越したスペクトルを示しており, 非常に鋭いピークがS波の先頭付近に現れていて,最大加速度 1,123galを記録している. 8月18日に現地調査を行ったが,川崎町役場にある震度計の設置条件(図4左)に 格別の問題があるようには見えなかったので,当地の地震時の揺れを反映した ものと考えざるを得ない. 役場を含む川崎町中心部は,釜房ダムに流れ込むふたつの川にはさまれた地域 に展開しており,河川堆積物などが短周期の揺れを増幅しやすい地盤条件を形 成している可能性がある. また,役場から400mほど離れたKiK-net観測点では,地表記録だけでなく地中 記録も過去の地震時に揺れやすかったことが知られており,より深部の地下構 造,たとえば当地が仙台平野南西部と東北脊梁山地の中間に位置する等も揺れ に影響した可能性がある.
震度計周辺の被害は軽微で,役場建物に小さなひび割れ,壁にひび割れの入っ た3階建てRC造建物1棟,外壁モルタルが剥離した家屋数棟などが見られる程度 であった(詳細は こちらへ). こうした軽微な被害で済むのは,短周期地震動で高震度が出た場合 の典型的な例である.
図4. 川崎町震度計の設置状況(左)と役場建物の小さなひび割 れ(右).
(以上,纐纈一起・坂上実・境有紀<筑波大>による)
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