2015年ゴルカ地震(ネパール)

東京大学地震研究所
応用地震学研究室
最新更新:2015年7月8日
作成:2015年4月25日


目次

背景にあるテクトニクス
今回の地震の震源断層
震源インバージョンの結果
5月12日の地震


背景にあるテクトニクス

インドプレートは年間5〜6 cmという速度で北上し,現在はユーラシアプレートに衝突している(図1).このプレートの相互作用が今回の地震をを発生させただけでなく,ヒマラヤ山脈やカトマンズ盆地などの山岳地形を形成している.


図1.5千万年前(左)から現在(右)までのインドプレートの北上とユーラシアプレートとの衝突(Courtesy: Dahal, R. K., 2002).

衝突の前面であるネパール・インド国境付近ではまさに衝突の状態にあるが(図1中・右),そこより北側のヒマラヤ山脈直下では過去に存在したテチス海(図1左)の海洋性プレートが沈み込んでいる.今回の地震はこの沈み込み部分で発生した.

今回の地震の震源断層

今回の地震の震央(破壊開始点)と6時間以内の余震を図2にプロットし,それらに基づいて165 x 105 kmの震源断層を推定した.これまで,ネパール地域の巨大地震は,浅い衝突部を中心に発生すると考えられていたが(たとえば図3),今回の地震の震源断層はその北側のやや深い部分(図1の沈み込み部分)にあり,従来の想定や研究結果(Sapkota et al., 2013など)とは異なっている.また,雪崩や山崩れなどの被害が目立っていることには,北寄りヒマラヤ山脈直下の震源断層の位置が関係しているだろう.


図2.本震破壊開始点(橙色)・6時間以内の余震(黄色)の分布とそれらか ら推定された震源断層面(黒四角).


図3.Avouac (2007)による過去の巨大地震の震源域に,Central Seismic GapとKathmandu(赤印)を加筆.

震源インバージョンの結果

遠地実体波をデータとしてKikuchi and Kanamoriの方法により震源インバージョンを行った.その結果,Mw(モーメントマグニチュード)7.9の震源過程モデルが得られた.このモデルによるすべり分布(最大すべり4.3 m)を,余震分布等に重ね描いたものが図4である.大きなすべりの領域が余震の発生が少ない領域と重なるのは,過去の地震の経験則と調和的である.また,カトマンズが大すべり域にかかってしまっていることと,断層破壊の進展方向にあることは,当地の大きな被害に関連があると考えられる.


図4.震源インバージョンによる断層面上のすべり分布(矢印とグレイスケール).破壊開始点・余震は図2に同じ.白印はカトマンズを表す.

5月12日の地震

図2に5月12日の地震(M 7.3)とその余震を追加したものを図5に示した. メカニズム解と深さが本震とほぼ同じなので同じような断層面で起きたと考えられ,余震分布も半分以上が本震の震源域に入っているので,この地震はゴルカ地震の余震と考えてよいように思われる. ただし,本震とのマグニチュード差が0.5しかなく,震源域も本震のものから東側に拡大している.


図5.5月12日の地震の破壊開始点(赤色)と5時間以内の余震(緑色)の分布.本震に関するものは図2に同じ.

(以上,纐纈・小林・三宅による)