2009年伊豆半島東方沖の地震活動による強震動

東京大学地震研究所
強震動グループ・強震観測室
最新更新:2009年12月20日
作成:2009年12月18日


目次

強震観測室のネットワークで観測された地震動分布の特徴
2009年12月17日23時45分の地震の距離減衰特性について
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強震観測室のネットワークで観測された地震動分布の特徴

東京大学地震研究所・強震観測室が管理している 伊豆・駿河湾強震観測網で記録 された強震動の一例を図1に,計測震度と最大加速度の分布を図2と図3に示 した. 図1では,震源から約10km離れた富戸観測点において最大加速度 114.3cm/s/s,計測震度4.6(震度5弱)が南北成分で観測されていることがわ かる. また,これらの中で図2と図3には以下のような特徴が見られた.

・平野部で大きく,山地では小さくなる傾向が見られる.
・震源から近いにもかかわらず,STGでの揺れは小さい(過去の活動においても同様の傾向が見られる).
・震源から離れているにもかかわらず,NBK(根府川)では大きな揺れが観測される (根府川は1923年関東地震の際にも地すべりを起こした場所でもあり,揺れやすい地域であると考えられる).

図1. 観測された強震動の一例(震源に近い3観測点:亀石・新井・富戸 での南北成分)

図2. 2009年12月17日23時45分に発生したM5.0の地震

図3. 2009年12月18日08時45分に発生したM5.1の地震

(以上,石瀬素子・坂上 実・前田拓人による)

2009年12月17日23時45分の地震の距離減衰特性について

本地震の地震動の特徴を,地震研究所強震観測室の強震記録を用いて調べ, 最大加速度および最大速度について,司・翠川 (1999) の距離減衰式と比較・ 検討した. 検討の際に,地震の規模と位置は防災科研F-netによった. 距離には,地震の規模がMw 4.8と比較的小さいため,震源距離を用いた. 最大加速度,最大速度の算出にあたっては, 0.1〜10Hzのフィルター処理を行った.ただし,観測点の地盤情報について, 一部の観測点のみ岩盤と判定済みなだけで,それら以外の多くの観測点では不 明であることが多いため,地盤増幅率の補正は行っていない. 比較の結果(下図)からは,震源近傍の観測記録がおおむね距離減衰式と調和的 であるが,岩盤上の記録や遠方の記録が比較的小さいことが見受けられる. これは,悪い地盤特性の観測点が少ないことや,火山に関連した高減衰域の存 在などに起因する可能性がある. しかし,本地震の規模が小さいため距離減衰式が外挿になっていることや,地 盤特性の十分な検討を行っていないことを念頭に,本検討結果は参考程度にと どめていただきたい.

(以上,司 宏俊による)