2009年駿河湾の地震

東京大学地震研究所
強震動グループ・強震観測室
最新更新:2009年08月25日
作成:2009年08月11日
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目次

今回の地震が発生した位置
強震観測室のネットワークで観測された地震動
地震動の距離減衰
震源過程


今回の地震が発生した位置

2009年8月11日05:07ごろに発生した駿河湾の地震の震源と,想定東海地震の震源域 ,フィリピン海プレート上面深度の位置関係を図1にまとめた.今回の地震は,想定東 海地震の震源域の東端に位置しており,フィリピン海プレート上面よりも10km以上深 い場所で発生したと考えられる.

図1. 2009年駿河湾の地震の震源(赤;気象庁, 2009),中央防災会議の資料に基づき大大特 プロジェクトIによりモデル化された想定東海地震の震源域(黒),大大特モデルによ るフィリピン海プレート上面深度(青;馬場・他, 2006; Sato et al., 2005).

(以上,強震動グループによる)


強震観測室のネットワークで観測された地震動

東京大学地震研究所・強震観測室が管理している,駿河湾・伊豆強震観測網で記録 された加速度波形と最大加速度を以下に示す.波形は,御前崎から南伊豆まで時 計回りに並んでおり,今回の地震をとり囲む配置となっている.注:相良観測点 の地中記録の方位は,地表と異なっている.

表1. 地震研強震観測網で記録された最大加速度(gal)
観測点N-S E-WU-D計測震度
参考値
湯ヶ島 232.5342.2 105.64.7
岩本山 187.0221.9 78.34.8
南伊豆 221.6123.6 71.64.1
御前崎 194.5131.5 57.84.5
湯河原 171.2112.8 53.54.8
松田寄 165.3121.6 62.24.4
富士川 161.586.2 68.24.4
富戸 146.1110.6 52.04.7
清水 145.5116.1 49.34.4
相良(地表) 120.0139.4 57.14.9
相良(地下) 55.351.8 28.53.9
松崎 120.2136.5 53.04.3
下多賀 106.932.2 35.04.1
亀石 100.9100.1 36.44.6
焼津 98.7100.1 59.54.2
新井(地表) 85.547.7 26.93.9
新井(地下) 33.441.7 15.13.2
初島 77.346.5 25.53.8
根府川 77.260.3 45.33.7
中河原 64.666.2 42.13.9
最乗寺 29.765.7 30.43.1
戸田 49.365.6 47.73.9
栢山 50.661.8 19.83.2
小田原集中局(地表) 52.061.2 15.83.9
小田原集中局(地下10m) 29.823.0 11.63.5
小田原集中局(地下30m) 22.713.3 9.43.1
小田原集中局(地下100m) 13.115.1 6.72.6
小田原集中局(地下500m) 9.38.4 5.12.3
沼津 59.659.6 28.13.8
西湘高校 57.246.6 13.53.8
久野台 55.446.5 25.33.5
松本神田(地表) 54.246.0 11.63.8
松本神田(地下100m) 13.97.2 7.13.0
諏訪文出 48.051.5 21.64.3
高田(地表) 49.040.5 18.73.7
高田(地下) 14.114.3 6.42.9
酒匂(地表) 48.349.0 20.73.5
酒匂(地下) 23.727.9 8.23.1
観測点N-S E-WU-D計測震度
参考値
尺里 40.048.2 23.83.4
油壷(地表) 46.925.1 9.93.3
油壷(地下8m) 10.310.0 6.42.5
油壷(地下250m) 4.33.7 2.61.8
城内 43.644.4 21.33.8
工芸センター 43.124.6 12.33.9
武蔵小杉 34.841.5 9.33.6
河津 38.835.7 24.53.4
八幡野 38.527.8 17.53.6
成田(地表) 37.838.2 15.03.6
成田(地下) 16.312.9 10.92.8
諏訪山地水セ 35.534.6 16.84.0
西酒匂 34.023.7 10.03.5
久野農協(地表) 29.632.1 11.53.6
久野農協(地下30m) 14.010.2 7.03.0
久野農協(地下100m) 12.57.2 4.02.6
南足柄 25.831.7 24.73.5
松本島立(地表) 28.321.7 8.03.4
松本島立(地下200m) 9.28.5 4.92.6
早川 19.026.8 11.63.2
清川 25.621.8 14.02.8
高津 11.611.8 8.22.6
伊豆大島 24.721.4 19.63.1
相模原 18.320.4 11.43.0
地震研究所 15.719.9 7.02.9
新百合丘 19.416.3 5.73.0
江東 17.519.1 6.73.2
浮島 16.015.6 7.33.0
諏訪湖南 15.69.5 7.82.7
久野(地表) 14.511.8 10.02.8
久野(地下) 9.17.7 7.52.6
赤田 13.713.0 8.32.3
国府津(地表) 12.111.8 6.92.7
国府津(地下) 4.45.2 4.42.1
鋸山(横坑25m) 3.25.2 3.62.1
鋸山(横坑110m) 2.74.1 2.32.0
鋸山(横坑172m) 2.83.7 2.42.0
 
(以上,強震観測室・応用地震学研究室による)

地震動の距離減衰

本地震の地震動の特徴を,防災科研 K-NET, KiK-net,港湾地域強震観測システム (PARI),糸静重点プロジェクト (ISTL),首都圏強震動総合ネットワーク (SK-net), 地震研究所強震観測室 (ERI) の強震記録を用いて調べた.最大加速度および最大速度 について,司・翠川 (1999) の距離減衰式と比較・検討したところ,スラブ内地震の 距離減衰式と調和的であった.なお,最大加速度の算出にあたっては,フィルターの 適用や地盤増幅率の補正は行っていない.最大速度の算出にあたっては 0.1-10 Hz のバンドパスフィルターをかけた後に,地盤増幅率を一律 1.4 倍と仮定して,工学 的基盤上の最大速度に変換している.

図2. 観測された最大加速度(上)・最大速度(下)と司・翠川 (1999) のスラブ内地震の 距離減衰式との比較.丸印は観測記録,実線と点線は距離減衰式の平均値と標準偏差 を表す. 図3. 観測された最大加速度(上)・最大速度(下)と司・翠川 (1999) のプレート境界地 震の距離減衰式の比較.丸印は観測記録,実線と点線は距離減衰式の平均値と標準偏 差を表す.

(以上,塚越 大・三宅弘恵・纐纈一起による)