「地震動の物理学」

2018年12月28日に近代科学社から刊行
2018年12月31日初版第1刷発行
2021年12月31日初版 Ver. 1.1
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序 文 1(初版第1刷)


<前略> 本書は,専門課程の学部生や大学院生などに,地震動や地震波の背後にある物理学を解説することをめざしています.地震動や地震波はどちらも地震による“揺れ”を表す用語ですが,地震の震源から近い場所の揺れを地震動,離れた場所の揺れを地震波と呼ぶことが多いように思います.
 本書が『地震動の物理学』と題するのは,震源に近い揺れの解析や計算に用いられる数式や手法を詳しく解説することを目的にしているためです.しかし,震源の解析に頻繁に使われる遠地実体波などに関するものも同じく詳しく解説しました.英語の類書はいくつかありますが,数式や手法を単に提示するだけではなく,それらを読者自身が導き出せるように解説しているところが本書の特徴です.特に,地震動は表現定理に基づくテンソル式で説明されることが多いのですが,本書では Love に始まる明示的な定式化を重視しました.その方が地震動の物理的イメージ,なかでも幾何学的イメージがとらえやすいという著者の考えに基づくものです.
 地震動は震源で生み出され,それが地下構造を伝播することにより変形されて,われわれの足元に届きます.したがって,地震動の物理学は観測された地震動から震源の効果と伝播の効果を分離して定量的に評価すること,と言い換えることができます.そこで本書では,第1 章でこの物理学の原理を解説し,第2 章で震源の効果を,第3 章で伝播の効果を解説しました.最後の第4 章では地震動を観測し,それを処理することについて解説しています. “物理学”ですので経験的手法は解説していませんが,そうした手法によるマグニチュードや震度は地震動にとって欠かせないものですので付録で解説しました.また,“地震動の” ですので走時データを主体とする震源決定やトモグラフィーなども含めませんでした.
 このような本書が読者にとって,地震動を考える上で多少なりとも助けになるとともに,地震動の研究が確たる物理学に基づいたサイエンスであることを感じていただければと願っています.本書の多くの部分は東京大学理学部・理学系研究科,京都大学防災研究所などで行った講義や演習をもとにしています.第2章は『日本の震源モデルカタログ』(東大出版会から刊行予定)の第1部第1章に大幅な加筆・修正を行ったものです.
 本書中の用語や表記は基本的に『地震学第3版』に従い,以下のようになっています.
<中略>
 Brian Kennett,斎藤正徳,久家慶子,三宅弘恵,室谷智子,佐藤俊明,中村洋光,Rainer Kind,川崎一朗,工藤一嘉,池上泰史,深畑幸俊,横井俊明,藤原広行の諸氏には原稿を読んでいただき貴重なコメントをいただきました(読んでいただいた順です).講義を聴講してくれた学生諸君の質問も有益でした.また,近代科学社の小山透,高山哲司の両氏には出版の機会をいただいた上に,編集では大変お世話になりました.記して感謝致します.
2018 年9 月東京・弥生にて
こうけつかずき
纐纈一起

序 文 2(初版 Ver. 1.1)


<前略> 本書は,専門課程の学部生や大学院生などに,地震動や地震波の背後にある物理学を解説することをめざしています.地震動や地震波はどちらも地震による``揺れ''を表す用語ですが,地震の震源から近い場所の揺れを地震動,離れた場所の揺れを地震波と呼ぶことが多いように思います.
 本書が『地震動の物理学』と題するのは,震源に近い揺れの解析や計算に用いられる数式や手法を詳しく解説することを目的にしているためです.しかし,震源の解析に頻繁に使われる遠地実体波などに関するものも同じく詳しく解説しました.英語の類書はいくつかありますが,数式や手法を単に提示するだけではなく,それらを読者自身が導き出せるように解説しているところが本書の特徴です. 特に,地震動は表現定理に基づくテンソル式で説明されることが多いですが,本書ではLoveに始まる明示的な定式化を重視しました.その方が地震動の物理的イメージ,なかでも幾何学的イメージがとらえやすいという著者の考えに基づくものです.
 地震動は震源で生み出され,それが地下構造を伝播することにより変形されて,われわれの足元に届きます.したがって,地震動の物理学は観測された地震動から震源の効果と伝播の効果を分離して定量的に評価すること,と言い換えることができます.そこで本書では,第1章でこの物理学の原理を解説し,第2章で震源の効果を,第3章で伝播の効果を解説しました.最後の第4章では地震動を観測し,それを処理することについて解説しています.``物理学''ですので経験的手法は解説していませんが,そうした手法によるマグニチュードや震度は地震動にとって欠かせないものですので付録で解説しました.また,``地震動の''ですので走時データを主体とする震源決定や トモグラフィーなども含めませんでした.
 このような本書が読者にとって,地震動を考える上で多少なりとも助けになるとともに,地震動の研究が確たる物理学に基づいたサイエンスであることを感じていただければと願っています. 本書の多くの部分は東京大学理学部・理学系研究科,京都大学防災研究所などで行った講義や演習をもとにしています.
 本書中の用語や表記は基本的に『地震学第3版』に従い,以下のようになっています.
<中略>
 Brian Kennett,斎藤正徳,久家慶子,三宅弘恵,室谷智子,佐藤俊明, 中村洋光,Rainer Kind,川崎一朗,工藤一嘉,池上泰史,深畑幸俊, 横井俊明,藤原広行,中原恒,竹中博士の諸氏には原稿を読んでいただき 貴重なコメントをいただきました(読んでいただいた順です). 講義を聴講してくれた学生諸君の質問も有益でした. また,近代科学社の小山透氏には出版の機会をいただき, 編集では同氏と高山哲司・安原悦子の両氏に大変お世話になりました.記して感謝致します.
東京の弥生(2018年)と神楽坂(2021年)にて
こうけつかずき
纐纈一起

金森先生のコメント(2019年1月25日

Dear Koketsu san:

Today, I received a copy of your book "Physics of Seismic Ground Motion".

It s a wonderful book, and must be a result of many hours of hard work.

These days, many of the basic theories and methods have been put in many handy software packages, and I often admire how many young seismologists handle complex analyses to produce nice results. However, very often the fundamental principles behind them are buried in a black box, and we are often asked questions on fundamentals. We thought that we studied them and understood them many years ago, but very often to our embarrassment, we also forgot about them.

This book will be very useful for rectifying this situation.

I like your idea of following the Love's book. Whenever I read it (only some chapters) I am impressed by the coverage and completeness of his treatment. The only problem is the notation, but I am glad that you did not follow Love's notation, only the philosophy and spirit.

Combining your book with some other excellent books on the subjects not covered by your book (e.g., Dr. Utsu's book (I do not have the 3rd edition)), a modern version of Richter's book (if any), and some treatments of "spherical geometry, i.e., normal mode") would be useful for training good seismologists. Of course, there is another branch of "structural" seismology.

Well, this is a good work, and congratulations.
Best regards, Hiroo Kanamori

第1刷の正誤表

行・(式)原因
22(1.60), (1.61), (1.62) k'02, k'2 k'0, k'エネルギーの定義
28, 29(1.85), (1.87), (1.88), (1.89) +∫dτρ, +∫∫∫τ, ∫dτ, +∫dτ∫∫∫τij, +∫dτ∫∫∫σij, ∫∫τ, ∫∫σ –∫dτρ, –∫∫∫τ, –∫dτ, –∫dτ∫∫∫τij, –∫dτ∫∫∫σij, ∫dτ∫∫τ, ∫dτ∫∫σ 部分積分の符号, τ積分の欠落
42, 43(2.1), (2.2), (2.3) =∫∫∫τij, ∫dτ, dV+∫∫τij, dV+∫∫σij, τij∂ui, ∫∫∫ρgi =–∫∫∫τij, –∫dτ, dV+∫dτ∫∫τij, dV+∫dτ∫∫σij, σij∂ui, ∫dτ∫∫∫ρgi (1.87), (1.88), (1.89), 誤植
56, 57 (2.54)のUy2P, (2.55)のUz2P βα 誤植
82 下から2行auxiallyauxiliary 誤植
121 23)K.:, Ito H.:, Itô 読みガナ, 誤植
315 脚注示されいる示されている 誤植


2018年12月16日
2019年01月30日
2019年06月25日
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